モスクワ取引所(MOEX)は12月1日、ビットコイン、イーサリアム、テザー(USDT)の取引を開始し、9月施行のデジタル資産法に基づくロシア初の規制下暗号資産市場を立ち上げる。同取引所と決済機関のナショナル・クリアリング・センター(NCC)は米英EUの制裁対象となっており、非適格投資家には年間30万ルーブル(約3700ドル)の購入上限がブローカーごとに設定される。
主要ポイント
- MOEXが12月1日、新暗号資産法に基づきBTC・ETH・USDT取引開始。既存株式インフラとNCC決済を活用
- 非適格投資家は年間30万ルーブル(約3700ドル)に購入制限。適性試験合格が必須
- MOEXとNCCは米(24年6月)、英(24年7月)、EU(26年7月)の制裁対象。グローバル参加の大きな障壁
- 業界専門家はスプレッド拡大と個人向け不採算、クロスボーダー決済での競争力欠如を警告
- 2027年7月からP2P直接取引禁止。流動性次第で規制下会場へ誘導の可能性
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
取引構造と投資家上限
同市場はMOEXの既存株式インフラ上で運営され、決済はNCCが担う。取引時間はモスクワ時間午前6時50分〜午後11時50分で、即日および翌営業日決済、スワップ取引に対応する。非適格投資家は購入前に適性試験の合格が必要で、年間購入額はブローカーごとに30万ルーブル(約3700ドル)に制限される。適格投資家の基準や同一上限の適用有無は未公表だ。
取引所は今回をパイロット段階と位置づけ、参加者のオンボーディング完了次第、取引を開始する。ロシア法では暗号資産による商品・サービス決済は引き続き禁止され、規制下の取引所取引のみが認められている。
制裁体制と市場アクセス
MOEXとNCCは2024年6月に米国、7月に英国、2026年7月にEUの制裁対象となった。制裁下にあることで、グローバル・マーケットメーカーや機関投資家はコンプライアンス・リスクを負ってまで参加しにくく、ロシア参加者もグローバル流動性プールへのアクセスが制約される構造的障壁が存在する。
クロスボーダー決済プラットフォーム「Exved」創業者で、自身も2024年5月に英国制裁対象となっているセルゲイ・メンデレフ氏はCoinTelegraphに対し、意味ある需要は見込めないとの見方を示した。「グローバルでもローカルでも、誰も気づかないだろう」と語り、制裁下の取引所で誰が取引するのか疑問を呈した。
価格形成リスクと個人投資家への価値提案
メンデレフ氏は「途方もないスプレッド(売買価格差)」が生じると警告し、スベルバンクの貴金属口座のように実物受渡しのない簿価取引に例えた。「一般の非適格投資家にとって、全く魅力がなく、不採算な提案だ」と断じる。
同氏が参照した0.05%のスプレッド水準は、トレーダーが直接交渉するクロスボーダー暗号資産決済市場での競争的水準だ。制裁下の取引所が仲介手数料を上乗せすれば、今回の法整備が想定する輸出入決済ユースケースで競争力を失う恐れがある。
クロスボーダー決済の可能性と2027年P2P禁止
メンデレフ氏は対外貿易への貢献可能性を認めつつ、「これが対外貿易の真のブレークスルーになることを期待する」と語り、輸入業者と輸出業者が直接暗号資産を交換できる会場を想定した。しかし、取引ルーティングを決める0.05%の価格差が支配する市場で、追加の仲介者が競争力を持てるか疑問視した。
別の規制措置として、2027年7月から直接的なP2P暗号資産取引が禁止される。流動性が確保されれば、MOEXのような規制下会場へ取引が誘導される可能性がある。
今後の見通し
注視すべき変数は以下の通り。立ち上げ初期の板厚と気配値スプレッド、アクティブなブローカー参加数、適格投資家への上限緩和や撤廃の有無、対象銘柄がビットコイン、イーサ、USDTの3銘柄から拡大するか、2027年P2P禁止の施行ガイダンス。外部環境として、ビットコインが7万6000〜7万7700ドルのサポート水準付近で推移していることが背景にある。ビットコイン7.6万ドルを維持、中間選挙のねじれ懸念で株高。
