米証券取引委員会(SEC)は29日、コロラド州法人のBGウェルス・シェアリングとDSJエクスチェンジの2社を、虚偽のSEC届出を悪用して規制当局の承認を得ているかのように装い、40州以上の個人投資家数万人から約1億3000万ドル(約195億円)を集めた疑いで提訴した。両社は暗号資産の「ウェルス・シェアリング・プログラム」を謳い、リスクフリーの収益を約束していた。
主要ポイント
- SEC、BGウェルス・シェアリングとDSJエクスチェンジを約1億3000万ドルの詐欺で提訴。40州以上の個人投資家を虚偽の暗号資産「ウェルス・シェアリング」で勧誘。
- 被告らは虚偽のフォームADVとフォームDをSECデータベースに提出し、これら公開届出を「規制承認の証拠」と偽って投資家を誘導。
- スキームは2025年10月~2026年6月、SNS・暗号化アプリ・ライブ配信・モバイルアプリで展開。ポンジ的配当と偽SEC印章証明書で信頼を維持。
- SECは恒久的差し止め、不当利得返還(遅延損害金含む)、民事制裁金を請求。両届出はSECサイトから削除済み。届出悪用に関する投資家アラートを発出。
- アルバータ州証券委と5州当局(テキサス、ユタ、ワシントン、ウィスコンシン、ハワイ)が連携。訴訟はカリフォルニア北部連邦地裁で係属中。
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
スキームの手口と虚偽の規制プレゼンス
カリフォルニア北部連邦地裁に提出された訴状によると、被告らは少なくとも2025年10月から2026年6月にかけて活動していた。SNS、暗号化メッセージアプリ、週次のライブ動画会議、専用モバイルアプリなど多チャネルで投資家を勧誘。核心的な売り文句は、いわゆる「SI生成シグナル」による暗号資産取引で、異常なほどのリスクフリー収益が得られるというものだった。
これを裏付けるため、BGウェルスは自らを「世界最大のヘッジファンド」かつSEC登録の投資顧問と偽り、DSJエクスチェンジを「ライセンスを持つ安全な暗号資産取引プラットフォーム」と説明していた。いずれも虚偽だ。訴状では、被告らがBGウェルスの虚偽フォームADV(投資顧問登録)とDSJエクスチェンジの虚偽フォームD(私募届出)をSECに提出し、これらがSECサイトで公開されていることを「SECがライセンス・承認した証拠」として投資家に示していたと指摘する。
「今回の疑惑は、被告らがターゲット層への発信にいかに多様なチャネルを選択したかからも、綿密に計画されていたことがうかがえる」と、SEC執行部サイバー・新興技術ユニット長のローラ・ダレアード氏は述べる。「さらに、SECの印章入り偽証明書を掲げ、一部投資家への定期的な配当(ポンジ・スキーム的手口)を行いながら、残りの資金を着服することで偽装を持続させた」
規制の脆弱性と届出システムの悪用
今回の措置は、SEC届出の公開プロセスに構造的脆弱性があることを浮き彫りにした。フォームADVとフォームDは、それぞれ投資顧問公開情報(IARD)とEDGARデータベースに、実質審査前の段階で掲載される。詐欺師は、届出から審査までのタイムラグや、単に届出が存在する事実を「承認」と誤認させる材料として悪用できる。SEC投資家教育・支援局は同時に投資家アラートを発し、免除報告アドバイザー届出が虚偽の正当性演出に使われていると警告した。BGウェルスのフォームADVとDSJエクスチェンジのフォームDは、既にSECサイトから削除されている。
法的請求と複数管轄の連携
訴状は、両社が1933年証券法および1934年証券取引法の反詐欺条項に違反したと主張。BGウェルスにはさらに1940年投資顧問法第204条(a)および第207条違反も適用される。SECは両被告に対し、恒久的差し止め命令、不当利得の返還(遅延損害金含む)、民事制裁金を求め、BGウェルスには行為ベースの差し止め命令も請求している。
捜査にはアルバータ州証券委員会と5つの州証券当局(テキサス州証券委員会、ユタ州証券局、ワシントン州金融機関局、ウィスコンシン州金融機関局、ハワイ州商務消費者庁証券執行部)が連携した。この多管轄連携は、被害者が40州以上と複数の準州に及ぶ地理的広がりを反映している。
投資家保護と今後の見通し
SECは投資家に対し、Investor.govで勧誘者の経歴を確認するよう呼びかけ、「SECサイトに届出があること自体が、承認や推奨を意味するものではない」と強調する。訴訟はカリフォルニア北部連邦地裁で審理され、差し止め救済と金銭的救済の可否が判断される。被告が外国運営の法人であり、暗号資産が国境を越えて迅速に移転可能な点を踏まえ、資産回収の見通しは不透明だ。市場関係者は、刑事告発の有無や不当利得返還の範囲を注視すべきであり、これらは国境を越える暗号資産詐欺における被害者救済の実現可能性を示唆する。
