欧州中央銀行(ECB)が10月中旬までに締結された労使協約を織り込んで更新した賃金トラッカーによると、ユーロ圏の交渉賃金伸び率は2027年前半まで高水準で推移する見通しだ。一時金を12カ月で平準化したヘッドライン指標は、26年下半期2.7%、27年上半期2.8%の後、同第3四半期には2.4%へ低下する。
主要ポイント
- 「一時金除き」トラッカー、27年1~9月期平均2.8%で26年通年2.6%を上回る
- ヘッドライン:26年下半期2.7%、27年上半期2.8%、同第3四半期2.4%/9月公表比約0.1ポイント上方修正
- 従業員カバレッジは27年第3四半期23.3%まで低下/先行分は「予測ではない」と修正リスク明記
- 24年下半期一時金の機械的効果が26年下半期で完全剥落、ヘッドライン押し上げ
- 12月公表で27年通年へ予測期間延長/理事会の利下げ経路判断の重要インプットに
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
基礎的賃金圧力が加速
政策判断により関連の深い「一時金除き」指標は明確な上昇軌道を描く。27年1~9月期平均は2.8%となり、26年通年(2.6%)や27年上半期単体(2.9%)を挟んで上振れ傾向を示した。ECBは「26年通年に記録された水準よりやや高い恒常的な交渉賃金伸び」を指摘し、「最近締結された労使協約では一時金の余地が限定的」と分析する。非平準化ベースでは27年第3四半期に2.4%まで落ち込む。
カバレッジ低下と修正リスク
従業員カバレッジは先行期間で急減する。26年46.2%から27年上半期31.8%、同第3四半期23.3%へ低下。ECBは先行分について「予測と解釈すべきではない」「新たな協約締結で修正される可能性がある」と明記する。26年および27年上半期のカバレッジは25年11月公表版と概ね同水準。ヘッドライン指標は26年9月公表比で26年下半期と27年上半期を約0.1ポイント上方修正した。
機械的効果の剥落
26年上半期のヘッドライン指標が相対的に低かったのは、24年下半期に支給された一時金が25年に繰り返されなかったことによる機械的な押し下げ効果が残っていたためだ。ECBはこの効果が「26年下半期までに完全に剥落した」と確認し、同期間の指標が2.7%へ上昇した背景を説明する。平準化済み(四半期動向向き)と非平準化(年間動向向き)の使い分けが四半期プロファイルの解釈で重要になる。
政策含意と次のマイルストーン
「一時金除き」が27年前半で2.8%を維持することは、生産性上昇を勘案しても2%インフレ目標と整合的な水準を上回ることを意味し、理事会の国内物価圧力への注視姿勢を裏付ける。12月公表で予測期間が27年通年まで延長される見込みだ。市場は各国統計から算出される公式のユーロ圏交渉賃金指標(トラッカーと乖離し得る)と、次回金融政策決定会合での政策判断を注視する。
