ブロックチェーン分析大手エリプティックは6日、10月29日にバイナンスから流出した64.3億ドルのうち、約31.1億ドルが北朝鮮系ハッカーの管理するアドレスに留まっていると報告した。ステーブルコイン発行元のテザーとサークルは流出額の44%にあたる28.5億ドルを1時間以内に凍結。2月のバイビット流出事件(15億ドル)で凍結されたわずか3%を大きく上回る回収率となった。
主要ポイント
- バイナンス流出64.3億ドルの48%にあたる31.1億ドルが未洗浄、北朝鮮系ウォレットに残存=エリプティック11月6日レポート
- テザー/サークルが1時間で28.5億ドル(44%)を凍結、バイビット事件の3%を大きく上回る
- 1万8270BTCと盗難イーサの89%は10月30日以降未移動、1億2400万ドル分がTHORChain経由でBTC化済み
- 洗浄に2万ウォレット超、16チェーン、6.5万取引超を使用、自動化の跡はあるがAIエージェントの痕跡なし
- バイナンスは来週末までに全面出金再開目指す、ZK準備金証明の検証機能を公開済み
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
洗浄メカニズムと現在の資金フロー
エリプティックによれば、洗浄作業は「極めて複雑かつ明確に自動化されている」。2万件超のウォレット、16のブロックチェーン、少なくとも36のサービス、約6万5000件の取引が使われ、約30秒ごとに新規ウォレットが作成された。このスピード感にもかかわらず、AIによる意思決定の証拠は見つかっていない。
主な動きはトロンで見られ、単一の分配ウォレットから51時間で6億8460万TRX(約2億2000万ドル)が数百アドレスに送付された。平壌時間の深夜帯にも動きがあった。TRXのほぼ全額がイーサリアムへブリッジされた。ソラナ由来の8700万ドル分は全額がスワップ、ブリッジ、ミキシング済み。XRPは5000万ドルがTHORChain経由でビットコインに換えられ、2億2600万ドルが残る。他資産からビットコインへの換算総額は約1650BTC(1億2400万ドル)に達し、前日のほぼ倍増となった。
一部資金はミキシングサービスへ流入。約33BTC(250万ドル)がワサビ型コインジョインを通じ、110万ドル分のETHとSOLがプライバシーキャッシュ・プールへ入った。同プールは約1日間、入金を一時停止した。
資産凍結の対比と業界連携
44%の凍結率は、バイビット事件の3%と劇的な対照をなす。テザーとサークルが盗難から1時間以内にステーブルコインを凍結できたことは、発行元レベルの統制が実効性を増していることを示す。一方、核心資産である1万8270BTC(盗難時約15億ドル相当)は盗難当日に19アドレスへ分割され、盗難イーサの89%を保有する9アドレスとともに10月30日以降動いていない。攻撃者が最も流動性の高い資産を後で換金するため温存していることをうかがわせる。
帰属と運用パターン
FBIは今回の盗難を北朝鮮系ハッカー集団「トレーダートレイター」の所業と断定。北朝鮮は関与を否定している。エリプティックは、平壌時間に合わせた深夜稼働や自動化された分配パターンが過去の北朝鮮系作戦と整合すると指摘。残存イーサはビットコインにスワップされ、OTCブローカーを通じて数カ月かけて換金されると予想する。バイビット事件でも49万9000ETHが10日で洗浄されたが、現金化には数カ月を要した。
取引所の復旧と市場へのインパクト
バイナンスはサービス復旧を継続。6日には最新の準備金証明スナップショットで、ゼロ知識証明を用いた1対1の残高検証をユーザー向けに公開。復旧済みネットワークの全トークンについて、来週末までに全面的な出金再開を目指す。盗難アルトコインがTHORChain経由でビットコインに換えられ、その後OTCで換金される構造はBTC相場の上値を抑える要因となり得る。一方、凍結されたステーブルコインは28.5億ドル分の流通量を実質的に吸収している。ビットコイン7.5万ドル割れを試す、バイナンス63.6億ドル流出と仏予算案否決で、バイナンス63.6億ドル被害、ホットウォレット署名管理の不透明さ露見。
