米証券取引委員会(SEC)は10月9日、1940年投資会社法に基づくルール17a-7の改正案を公表し、登録ファンドによるクロストレード(相対取引)の対象銘柄を拡大する方針を示した。2020年のファンド評価ルール導入以来、事実上制限されていた大半の固定利付証券について、関連会社との相対取引を再び可能にする。価格決定プロセスと監督体制を現代化し、取引の集計報告を義務付けることで、ファンドの取引コスト削減と株主利益の還元を狙う。
主要ポイント
- SECがルール17a-7改正案を提示、2020年評価ルール以来の固定利付証券クロストレード実質禁止を解除へ
- 電子取引普及とTRACEデータ等による価格透明性向上を根拠に、価格条件を現代化
- クロストレードの出来高・相手先・価格の集計報告を義務化、規制当局と市場の監視機能を強化
- 連邦官報掲載から60日間のコメント期間、最終ルール採択時期は不透明
- アトキンス委員長は取引コスト削減による株主還元を狙った規制現代化と位置づけ
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
規制の根拠とルールの仕組み
改正案の対象は、1966年の初回採択以来、登録ファンドとその関連会社間の有価証券取引を認めてきたルール17a-7だ。このルールにより、ファンドは「時価」で内部取引を行うことで、気配値スプレッドや手数料といった公開市場での取引コストを回避し、その恩恵を投資家に還元してきた。しかし、2020年にファンド評価ルール(ルール2a-5)が採択されると、固定利付証券の多くが新たな公正価値評価フレームワークで求められる「容易に入手可能な市場価格」を欠くため、クロストレードが実質的に不可能となっていた。
ポール・S・アトキンス委員長は、今回の改正が「現在の市場実態に規制枠組みを合わせる一歩」になると述べた。電子取引の普及やTRACE(取引報告・コンプライアンス・エンジン)データの活用などにより、固定利付商品の価格検証可能性と透明性が高まったことを再編入の理由に挙げる。改正案では、価格決定手法とクロストレードの監督条件を現代化するほか、クロストレードを行うファンドに取引活動の集計報告を新たに義務付ける。
背景:2020年評価ルールによる混乱
SECが2020年にルール2a-5を採択した際、ファンド取締役会に評価指名者の指定と善意の公正価値評価を義務付けた。当時、同ルールの評価基準とルール17a-7の価格条件、特に「独立した気配値」による「時価」の裏付け要件が相まって、固定利付証券のクロストレードが事実上禁止されることを委員会も認識していた。クロストレードルールの見直し検討を示唆しながら、約6年を経て今回の提案に至った。
影響分析:コスト削減と利益相反の緩和
主な恩恵を受けるのは、固定利付証券の比率が高い登録投資会社(投資信託とETF)だ。社債、エージェンシーMBS、その他のクレジット商品でクロストレードが可能になれば、ファンド複合体内で解約売りと買い付けをマッチング(フロー・マッチング)し、外部取引コストを圧縮できる。SECはこの削減分が株主に還元されると主張する。
一方、クロストレードには関連ファンド間の利益相反が内在する。提案は「投資家保護措置の強化」として、電子取引プロトコルやTRACEデータの普及といった現在の市場構造を反映した価格条件の現代化と、集計報告の義務化で対応する。報告義務により、クロストレードの出来高、相手先、価格結果の詳細データがSECと市場に提供され、不利な選択(アドバース・セレクション)やチェリー・ピッキングの監視が可能になる。
今後の見通し:コメント期間と実装
改正案はSECウェブサイトと連邦官報で公表される。連邦官報掲載から60日間がコメント期間だ。運用会社、固定利付取引会場、カストディ銀行などは、流動性の低い債券の「検証可能な価格」の運用定義、集計報告のデータ項目範囲、コンプライアンス・システム移行のタイムラインを焦点に意見を出す見込みだ。最終ルールの採択時期は不透明だが、コメント締切後通常6〜12ヶ月の審査サイクルを経る。
