英国下院ビジネス・通商委員会は、防衛、人工知能(AI)、ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)に不可欠な重要鉱物で英国が中国に「危険な」ほど依存していると指摘し、専用の金融ファシリティ創設と統合戦略によるサプライチェーン確保を政府に求めた。
主要ポイント
- 英国下院委員会が、防衛・AI・ネットゼロに不可欠な重要鉱物で中国への「危険な」依存を警告。
- 中国が7鉱物カテゴリーの精錬を独占。リチウム需要45倍、レアアース16倍へ(2030年)。
- 政府は4億ポンド拠出と2035年目標(国内生産10%、リサイクル20%、単一国上限60%)を提示。
- 委員会は「重要鉱物金融ファシリティ」創設と統合戦略を要求。議会への情報不透明を批判。
- 英国の供給安全保障は、2027年1月期限の米中レアアース猶予措置に依存する構造。
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
委員会の調査結果:精錬段階における戦略的曝露
リアム・バーン委員長率いる同委員会は、中国が16年前に初めて「レアアースのチョークポイントを武器化」して以来、英国が依然として極めて脆弱な状態に置かれていると結論づけた。委員会は精錬段階をクリティカルなボトルネックと特定し、電気自動車(EV)向けリチウムや、極限温度に耐える軍用機の胴体に使われるレアアースを含む7鉱物カテゴリーの精錬を中国が独占していると指摘する。
需要予測は緊急性を裏打ちする。リチウム需要は2030年までに45倍、軍用ジェットの永久磁石などに用いられるレアアースは16倍に急増すると見込まれる。委員会は、2025年の中国によるレアアース輸出制限が、北京がサプライを地政学的道具として活用する意思を示したと判断した。
政府の対応と2035年目標
政府報道官は戦略的怠慢の指摘を退け、「国内生産とリサイクルの拡大」および新たな国際連携構築に向け4億ポンドを拠出済みだと強調した。政府は2035年に向けた明確な目標として、需要の10%を国内生産で、20%をリサイクルで賄い、いかなる重要鉱物も単一国への依存を60%以下に抑えることを掲げている。
しかし委員会は、透明性の欠如により調査が困難だったと不満を表明。「議会は、政府が守ろうとする能力、特定した脆弱性、リスク低減に向けた支援プロジェクトを把握できていない」と報告書は述べ、政府がサプライレジリエンスのための10のテストのいずれも満たせるとは確信できないと結論づけた。
地政学的背景:米中の猶予期間
英国の立場は大国間ダイナミクスにより一層複雑化している。ドナルド・トランプ次期大統領(当時)は2024年10月、習近平国家主席からレアアース輸出制限の1年間猶予を取り付け、習主席の訪米後に2027年1月まで延長された。委員会は、これが英国を「米中関係の慈悲に委ねる」存在にし、主権的な供給安全保障から遠ざけると警告する。
2024年10月には、オランダ当局が中国資本のネクスペリア(Nexperia)に介入したことを受けたレガシーチップ輸出規制により、欧州自動車産業が「数日で生産停止に追い込まれた」事例も浮上。隣接する半導体サプライチェーンの脆弱性が改めて露見した。
提言される処方箋:金融ファシリティと同盟国連携
委員会の10項目提言の核心は、「重要鉱物金融ファシリティ」を創設し、助成金、出資、融資を通じて鉱山開発と供給源多様化を加速させることにある。G7、欧州、インド太平洋のパートナーと連携し「需要を集約」して新規サプライヤーを市場に参入させるほか、国内での採掘・精錬・リサイクル機会の発掘と計画制度の障壁改革を並行して進めることを提唱する。
「『英国には新たな制度的・財政的筋肉が必要だ』と報告書は締めくくり、現在の取り組みは戦略的課題に見合う規模と調整機能を欠いていると断じた。
