フランス国民議会(下院)は16日夜、2027年国家予算の歳入部門を賛成458、反対0、棄権2で否決し、同日までに可決されていた暗号資産関連の3修正案――ステーブルコイン転換益への課税、10万ユーロ(約1億6000万円)以上の自己管理型保有の申告義務化、取引所への罰則強化――を法案から剥離させた。法案は上院へ送付される。
主要ポイント
- 国民議会が2027年予算歳入案を458対0で否決、可決済みの暗号資産3修正案が白紙に
- 剥離された修正案:ステーブルコイン転換益課税、10万ユーロ自己管理申告義務化、取引所罰則5万ユーロへ引き上げ
- 政府は修正案なしの原案を上院へ送付、20日本格審議開始、23日歳入条項精査
- 上院で修正案再提出の可能性、両院協議会調整や憲法49条3項適用も含め年内成立へプロセス継続
- 仏暗号資産投資家と事業者は規制不透明感の中、上院動向を注視
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
否決の立法メカニズム
歳入部門(税収など政府収入を規定)が全会一致で否決されたことで、憲法上のリセットが作動する。政府は暗号資産修正案を含まない元の予算案を上院へ送付し、上院で第一読会が行われる。フランスの予算手続きでは、歳入部門が可決されなければ歳出部門の審議に進めないため、今週初めに採択された3つの暗号資産修正案を含む全修正案が法的に無効化された。
10月16日、暗号資産からステーブルコインへの転換益を課税対象とする修正案が可決。翌17日には、当年12月31日時点で10万ユーロ以上の自己管理型暗号資産保有を申告義務化する修正案、税務当局への情報提供義務違反に対する取引所罰則を1万ユーロから5万ユーロへ引き上げる修正案が相次いで可決されていた。
政策背景と業界の反応
これら一連の修正案は、自己管理型資産とステーブルコイン取引を課税網に取り込むフランス史上最も積極的な試みであり、EUの暗号資産市場規制(MiCA)や税務透明化指令(DAC8)と歩調を合わせるものだった。レンディングプロトコルMorphoのグローバル公共政策責任者ファウスティーヌ・フルーレ氏は採決前、歳入部門の否決が「国民議会で修正案を経て採択された条項を含め、法案全体の否決を招く」と警告していた。政府が修正案なしの「クリーンな」法案を上院へ送付したのは、議員発議の暗号資産政策を受け入れるより、行政主導で立法アジェンダを管理する意向の表れとみられる。
市場への波及とコンプライアンスへの影響
投資家にとっては当面、規制の空白状態が続く。USDT、USDC、ユーロ建てステーブルコインへのスワップを課税イベントとみなす転換益課税は一旦棚上げされたが、上院審議で復活する可能性がある。10万ユーロの自己管理申告基準は、業界調査によればフランス個人保有者の15〜20%を捕捉し、ハードウェアウォレットや非カストディアル型ソフトウェアウォレット利用者に年次申告義務を課すものだった。バイナンス、クラーケン、仏PSAN(デジタル資産サービスプロバイダー)登録済みの国内事者は、税務当局への情報提供義務違反に対する罰則5倍化をひとまず回避した格好だ。
上院スケジュールと立法経路
上院は11月20日に予算案の本格審議を開始し、23日に歳入条項を条文単位で精査する。上院議員は暗号資産修正案を原案通り再提出するか、修正版や新規条項を提出するかの選択肢を持つ。上院で可決された案文は下院へ差し戻され第二読会が行われ、両院で合意に至らなければ混合委員会(Commission Mixte Paritaire)が調整に当たる。政府は憲法49条3項を行使し、採決なしで法案を強行成立させる選択肢も残すが、政治的リスクを伴う。2027年予算は年末までに成立させる必要がある。
