英国政府は3日、無期限滞在許可(ILR)の標準資格期間を現行の5年から10年に倍増させる改正移民ルールを発表した。シャバナ・マフムード内相が議会で表明した。一方、年収5万ポンド(約970万円)超えには5年、12.5万ポンド(約2400万円)超えには3年の短縮ルートを設け、介護職には年収2.5万ポンド(約485万円)以上で5年での取得を認める特例を設けた。
主要ポイント
- 永住権(ILR)の標準期間を5年から10年に倍増、2027年施行
- 所得で三段階:3年(12.5万ポンド超)、5年(5万ポンド超)、10年(5万ポンド未満)
- 介護職は年収2.5万ポンド以上で5年、深刻な人手不足に対応
- 難民は入国経路で5年(合法ルート)、20年(通常)、30年(不正入国)に階層化
- 遡及適用で約140万人に影響、政府は「数十億ポンド」の給付削減を見込む
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
所得連動型の永住権フレームワーク
来年施行予定の新ルールでは、永住権取得の可否が所得に直結する。年収5万ポンド超は現行通り5年、12.5万ポンド超は3年で申請可能だが、それ以外は10年を要する。英国の平均年収は約3.9万ポンド(約755万円)であり、大半の外国人労働者が長期ルートに回る見通しだ。
犯罪歴、英語能力の「高水準」未達、公的債務の滞納、国民保険(NI)拠出3年未満も不許可事由となる。在留中の移民にも遡及適用されるため、法的争訟の火種になりそうだ。
介護セクターの例外措置、労働圧力を背景に
介護職の特例は、組合や労働党左派の強硬な反発を受けた譲歩だ。ブレグジット後のEU人材流出で空いた穴を2020年代初頭から埋めてきた介護職員について、ビザ条件遵守と年収2.5万ポンド以上で5年での永住を認める。マフムード内相は「必要とされた時に応えて働いた人々への道筋」と強調した。同セクターは長らく高い空き職率に悩み、国際採用への依存度が高い。
難民定住:入国経路で三層化
難民の定住期間は入国ルートで階層化される。「新たな安全かつ合法的なルート」利用者は5年、通常の難民は20年、小型ボート越境など「違法」入国者はさらに10年上乗せの30年となる。政府は英仏の取り締まり強化で英仏海峡の越境が前年比4割超減とした。
財政試算と政治的文脈
マフムード内相は「50万人の定住が遅れ、数十億ポンドの給付費を節減できる」と説明。2026〜30年に140万人が永住権を取得すると試算する。12週間のパブリック・コンサルテーションには20万件超の意見が寄せられた。ナイジェル・ファラージ氏率いる改革UKが小型ボート問題を危機として訴え支持を伸ばす中、アンディ・バーナム首相は「経済貢献に見合う定住権」として公平性の回復をアピールする。
