ギリシャ議会は、年間の暗号資産純利益が500ユーロ(約557ドル)を超える部分に10%の譲渡益税を、ステーキング、レンディング、DeFi流動性提供による利回りには別途15%の税率を課す法案を可決した。施行は2027年1月1日。債務返済と金融監督を扱う広範な財務省パッケージに組み込まれたこの法制化は、6月の一律15%案と10月の10%案に関するパブリックコメントを経て、税率が引き下げられた経緯がある。
主要ポイント
- 年間暗号資産純利益500ユーロ超に10%の譲渡益税、ステーキング・DeFi利回りに15%。2027年1月1日施行。
- 500ユーロのクリフエッジ型控除:閾値超過で利益全体が課税対象(例:600ユーロ利益なら60ユーロ納税)。
- 議会科学局が指摘:制定法の文言が暗号資産スワップを意図せず課税対象にする恐れ。政府は非課税の意向。
- 過去の未申告所得向けに12カ月の自主申告期間。5年間の損失繰越控除を認める。
- 財務省が数週間以内に監査・透明化指針を公表予定。公式の税収試算は未公表。
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
税率構造とクリフエッジ型控除
年間の暗号資産純利益が500ユーロ以下の個人投資家は非課税。しかし、この閾値を1ユーロでも超えると、超過分のみならず利益全体に10%が課される。例えば600ユーロの純利益なら、10ユーロではなく60ユーロの納税となる。利益は原則として取得原価を処分価額から控除して算出する。ビットコインをユーロ建てで売却する場合や、暗号資産で商品・サービスを購入する場合も課税対象の処分とみなされる。投資家は取得原価と処分価額を証明する取引記録の保存が義務付けられる。
ステーキング、レンディング、DeFi流動性提供による利回りは利子所得と分類され、15%で課税される。500ユーロを超える適格な暗号資産損失は、将来の暗号資産利益と相殺するため最長5年間繰り越せる。また、一定条件下で申告から60日以内に納付すれば、過去の未申告暗号資産所得について延滞税なしで自主申告できる12カ月の猶予期間が設けられている。
立法経緯とMiCAとの整合
今回の可決は、6月にギリシャ当局が議論していた15%から引き下げられた10%案について10月にパブリックコメントが実施された後に続く。スケジュールは、加盟国に監督・課税枠組みの整備を求めるEUの暗号資産市場規制(MiCA)の導入時期と歩調を合わせている。財務省高官はロイターに対し、取引透明化と税務調査に関する行政指針を数週間以内に公表すると述べた。政府は、多くのギリシャ投資家が海外プラットフォームを利用しているため市場規模の把握が困難だとして、税収見込みを公表していない。
暗号資産スワップを巡る曖昧さ
議会科学局の審査で、法案が「対価を得て行う処分」との広い文言を用いている点が指摘された。この文言はトークン間取引を含み得るとされ、付帯説明書ではスワップを課税対象外とする意図が示されているにもかかわらず、制定法の文言がその意図を反映していない可能性がある。審査局は明確な免除規定と、ステーブルコインや電子マネートークンを伴う交換の明確なルール設定を勧告している。アテネ当局は暗号資産同士の交換で譲渡益税が発生することはないとの立場だが、成立した法文が必ずしもその意図を反映しているとは限らない。
コンプライアンスの展望と次のステップ
財務省が公表する行政指針は、報告基準と監査手続きを定め、実務運用の鍵を握る。12カ月の自主申告期間は、過去の保有分についてコンプライアンスを整える機会となる。市場参加者は、2027年の施行前に議会がスワップ条項を修正するか、MiCAおよびOECD暗号資産報告枠組み(CARF)の下で海外プラットフォームとのデータ共有がどう進展するかを注視する必要がある。仮想通貨の強制決済10.5億ドル超、ビットコイン11週ぶり安値更新 リスクオフの波で。
