英国下院ビジネス・通商委員会は5日、英国が軍事力増強、人工知能(AI)インフラ、ネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)達成に不可欠な重要鉱物で中国に「危険な」ほど依存しているとの調査報告書を公表した。リチウム需要は2030年までに45倍に急増すると予測され、委員会は専門のファイナンス・ファシリティ創設とサプライチェーン多様化のための統合戦略を即座に講じるよう政府に求めた。
主要ポイント
- 英国下院委が重要鉱物で中国への「危険な」依存を警告、防衛・AI・ネットゼロに直撃
- リチウム需要45倍、レアアース16倍(2030年);中国が7鉱物カテゴリーの精錬を支配
- 委員会は『重要鉱物ファイナンス・ファシリティ』と10項目多様化計画を要求、政府は現状10テスト全て不合格
- 政府は4億ポンド拠出と2035年目標(国内生産10%、リサイクル20%、単一国依存60%以下)を提示
- 米中レアアース輸出猶予が2027年1月期限、サプライチェーン強靭化のハード・デッドラインに
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
委員会の調査結果:精錬段階での戦略的チョークポイント
リアム・バーン委員長率いる同委員会は、中国がEV(電気自動車)用電池に必要な精製リチウムや、軍用機の胴体・主翼に使われ耐熱性を担うレアアースを含む7カテゴリーの重要鉱物の精錬で締め付けを強めていると結論づけた。委員会によると、リチウム需要だけでも2024年から2030年にかけて45倍、軍用機の永久磁石に必要なレアアースは同期間に16倍に拡大する見通しだ。
「重要鉱物は新経済の『アルファ(超過収益)』だ」とバーン氏は述べた。「これらの鉱物を確保しなければ、英国の再軍備も、AI構築も、ネットゼロ達成も不可能だ。中国が初めてレアアースを『武器化』してから16年が経つのに、英国はいまだに危険なほど露出したままだ」
報告書は、中国が2025年にレアアース輸出を突然制限した事例を挙げ、北京がサプライチェーンを地政学的なテコとして使う意思を示したと指摘。中国資本のオランダ企業ネクスペリアを巡る紛争を受けたレガシー半導体への個別制裁が、昨年10月に欧州自動車業界を「数日で」生産停止に追い込んだことも、サプライチェーンの脆弱性が差し迫った脅威であることを物語っている。
政府の透明性と10項目計画
委員会は、政府の透明性欠如により調査が難航したと訴える。「政府が守ろうとしている能力、特定した脆弱性、リスク低減のために支援しているプロジェクトについて、議会には一切見えていない」と報告書は断じる。委員会は、国内の採掘・精錬・リサイクル機会とコストの特定、中国からの調達削減を企業に促す戦略、投資喚起策、採掘許認可の障壁評価などを含む10項目計画を提示した。
現状では、委員会は政府が10項目のテストのいずれもクリアできるとは判断できないとして、「英国には新たな制度的・財政的な『筋肉』が必要だ」と結論づけ、助成金・エクイティ・債務を駆使して多様化を加速する「重要鉱物ファイナンス・ファシリティ」の創設を具体的に勧告している。
政府の対応と2035年目標
政府報道官は重要鉱物戦略が存在しないことを否定し、「国内生産とリサイクルの拡大、新たな国際パートナーシップ構築」に4億ポンドを拠出済みだと強調した。戦略では2035年目標として、国内生産で需要の10%、リサイクルで20%を賄い、いかなる重要鉱物も単一国依存を60%以下に抑えることを明記している。
しかし、委員会の評価では、許認可の遅延と専用ファイナンス・ビークルの不在を踏まえると、現行の取り組みではこれら目標の達成は程遠い。
地政学的文脈:米中の猶予とG7連携
報告書は、トランプ前大統領が2025年10月、習近平国家主席からレアアース輸出制限の1年間猶予を取り付け、習氏の訪米後に2027年1月まで延長された経緯に言及。この猶予がある限り、英国は米中関係の慈悲に委ねられる立場にある。委員会は、最も「現実的」な解決策は、英国がG7諸国、欧州、インド太平洋諸国と緊密に連携し、「需要を集約」して新規サプライヤーを市場に参入させることだと主張する。
今後の展望:実装とモニタリング
今後の重要なマイルストーンは、政府による10項目計画への公式回答、重要鉱物ファイナンス・ファシリティの設計と資本化、G7・EUによる協調調達イニシアチブの進捗だ。2027年1月の米中レアアース猶予期限は、サプライチェーン強靭化策のハード・デッドラインとなる。議会はまた、計画制度改革が国内採掘プロジェクトを解禁するか、4億ポンドの配分が実操業の精錬能力に結実するかを監視していく。
