アップルの2026年7-9月期(第3四半期)売上高は1145億ドルと市場予想を上回ったが、ジョン・ターナス最高経営責任者(CEO)は、AIデータセンターの需要拡大を背景にメモリチップ価格が「前例のない」ペースで上昇しており、足元の四半期は利益率が圧迫されると警告した。
主要ポイント
- 第3四半期売上高1145億ドル(前年比+12%)、EPS2.10ドルでコンセンサス(1134億ドル/1.99ドル)を上回る
- ターナスCEOが「前例のない」メモリ価格高騰を警告、第4四半期マージン圧迫必至
- AIデータセンター需要(「ラマゲドン」)がサプライチェーン全体の部品コスト上昇を牽引
- 6月・9月のiPad、MacBook、iPhone値上げは部分的な相殺にとどまる
- iPhone Duo折りたたみ機に早期関心も画面割れ報告浮上、フルリリースは未定
エグゼクティブ・インテリジェンス・ブリーフ
増益も部品コスト警告で株価下落
純利益は前年同期比12%増の307.1億ドル、1株当たり利益(EPS)は2.10ドル(前年同期1.85ドル)となった。売上高も12%増の1145億ドル(前年同期1025億ドル)だった。いずれもファクトセットコンセンサス(EPS1.99ドル、売上高1134億ドル)を上回った。アルファベット、アマゾン、インテルが相次いで失望決算を発表する中、ビッグテックの弱含みトレンドを覆す結果となった。
しかし、時間外取引で株価は2.75%下落した。9月にCEOに就任したターナス氏がメモリコストの上昇軌道を懸念材料として挙げたためだ。「現在のメモリ価格動向は前例のないものだ」と決算説明会でアナリストに語り、第4四半期のメモリコストが前四半期を上回ると予測した。
AIデータセンター需要がサプライチェーンで「ラマゲドン」引き起こす
市場関係者の間で「ラマゲドン(RAMageddon)」と呼ばれる業界全体の需給逼迫は、AIデータセンター事業者からのハイバンド幅メモリへの旺盛な需要に起因する。この需要が民生機器メーカー向け供給を圧迫し、DRAMとNAND型フラッシュメモリのスポット価格と契約価格を押し上げている。iPhone、Mac、iPadとメモリ集約型製品を抱えるアップルの影響は大きい。
ターナス氏は、6月のiPadとMacBook、9月のiPhoneでの値上げが「ある程度の相殺効果」をもたらしたと述べた。しかし、部品コスト上昇と小売価格調整のタイムラグにより、短期的には粗利益率がスプレッドを吸収することになる。
製品ミックスと地域別業績
増収は主にiPhone販売とMac miniの堅調な需要が牽引した。クイルター・シェビオットのベン・バリンガー氏は、Mac miniが「エージェンティックAI」ユースケースの恩恵を受けていると指摘する。中国事業は堅調で、これまで懸念されていた前四半期からの改善を示唆した。一方、iPadとウェアラブルは振るわず、サービス収入は10%増にとどまり、全社平均を下回った。
バリンガー氏は今回の決算を「悪くないが、やや失望感もある」と評し、サービス減速とウェアラブル不振を挙げた。初の折りたたみスマホ「iPhone Duo」への早期関心には言及しつつ、「製品がまだフルリリースされておらず、初期段階にある」と慎重な見方を示した。
折りたたみ機の品質懸念と経営トップ交代
別の報道では、一部のiPhone Duoユーザーから画面割れの報告が上がっており、新フォームファクターの立ち上げに実行リスクが加わっている。バリンガー氏によれば、同製品の成功は「アップルの製品イノベーションの次の段階」にとって極めて重要だ。
今四半期にはティム・クック氏が会長に就任し、4700万ドルの報酬パッケージが付与されたことも正式化された。クック氏のCEO在任中にアップルは時価総額5兆ドル到達という偉業を成し遂げた第2の企業となったが、投資家がAI関連銘柄から資金をシフトさせる中、株価は最近調整局面にある。
見通し:マージン軌道とAI戦略の差別化
イーマーケターのジェイコブ・ボーン氏は、アップルの「消極的なAIインフラ投資姿勢」が、データセンター建設に数百億ドルを投じる競合他社と比較してキャッシュフローを温存していると指摘する。アルファベットなどとの提携により、同等の資本集約度を伴わずにAI機能を統合できる可能性がある。
来四半期の鍵は、メモリコストによる粗利益率への正確な影響度合い、iPhone Duoの不良率と返品規模、マクロ逆風下での中国の堅調な成長軌道の持続性だ。また、英国で15億ポンドの規制当局による裁定が出ており、アップルは控訴を目指している。
